医療法人社団 中津胃腸病院

肛門外科

肛門外科

肛門の治療は抵抗がある方も少なくないと思いますが、放っておいても良くなることはありませんし、出血、痛みなどの症状で座れない、歩きづらいなど生活の質を下げることになってしまいます。肛門や排便に関連した症状がある場合、痔であることが多いのですが、大腸がんなどの重大な病気によって起こっている可能性もありますので、できるだけ早い受診が不可欠です。また痔である場合も、早期に適切な治療を行うことで楽に治せる可能性が高くなります。中には何年も我慢される方もいるのですが、早めに治療することをおすすめします。気になることがありましたら、気兼ねなくご相談にいらしてください。

このような症状はご相談ください

  • 肛門が出っ張ったり膨らんだりしている
  • 肛門から血が出る
  • 肛門が痛い
  • 便が出にくい

痔の三大疾患

痔とは、肛門周囲の病気を総称していう言葉です。その中でも、三大疾患といわれる痔核(いぼ痔)・裂肛(きれ痔)・痔ろう(あな痔)が全体の8~9割を占めます。日本人の3人に1人は痔にかかっているといわれるほど、非常に身近な病気の1つです。

痔と間違いやすい病気は腫瘍(大腸がん・大腸ポリープなど)や腸の炎症による病気(虚血性腸炎・潰瘍性大腸炎など)があります。症状だけで痔と決めつけないで受診することをおすすめします。

痔核(いぼ痔)

内痔核

内痔核

通常は排便時に出血することはあっても、痛みは感じません。程度により、痔核が肛門の外にとび出ることがあります。

外痔核

外痔核

出血は少ないですが、痛みを感じます。悪化すると血栓(血のかたまり)ができて激しく痛みます。

便秘や排便時のいきみ、長時間の同じ姿勢(座り続ける、立ち続けるなど)によって、肛門付近の血流が悪くなり、うっ血して、粘膜がはれ上がりいぼのようなものができます。肛門の内側にできるものを内痔核、外側にできるものを外痔核といいます。

治療は食生活や排便習慣などのライフスタイルを改善して、痔の症状を悪化させないようにする保存療法が中心です。補助的に薬物療法も行います。出血がひどい場合や脱出によって日常生活に支障をきたす場合は、外来処置や手術を行います。

手術・治療方法

手術・治療方法

ジオン(ALTA)注
ジオン注射とは、脱出を伴う内痔核(排便時に出てくる、あるいは普段から出たままになっているようないぼ痔)に対して、注射による治療を可能にしたものです。 ジオン注を投与する前に肛門周囲への麻酔を行い、肛門周囲の筋肉を緩め注射しやすくします。1つの痔核に4ヶ所に分けて注射し、薬液を十分に浸透させます。複数の痔核がある場合はそれぞれに投与します。注射後は落ち着くまで30分~1時間程度の安静が必要です。ジオン注射投与後は痔核へ流れ込む血液の量が減り、出血が止まります。腫大していた痔核は次第に小さく硬くなり、元の位置に密着・固定して脱出がみられなくなります。

結紮切除術
痔核に流入する血管を結紮し、痔核を切除する手術です。

裂肛(きれ痔)

女性に多くみられます。
硬い便や勢いよく下痢便が通過することにより、肛門の皮膚が切れたり裂けたりした状態です。排便時・排便後の痛みと、紙に付着するくらいの少量の出血があります。
基本は食事療法や薬物療法(緩下剤や整腸剤)による排便コントロールと、傷を治すための軟膏による保存療法を行います。

痔ろう(あな痔)

肛門周囲膿瘍

肛門周囲膿瘍

肛門の内側のくぼみに細菌が感染して炎症を起こし、化膿します。
肛門の周囲が腫れてズキズキする痛みがあり、38~39℃の高熱を伴うこともあります。時には皮膚が破れて膿がでることもあります。痔ろうの前段階です。

痔ろう

痔ろう

男性に多くみられます。
肛門周囲膿瘍の膿がでた後に、膿のトンネルができたものです。放っておくとトンネルがたくさんできたり(複雑痔ろう)、がんになるリスクもあります。

手術・治療方法

肛門周囲膿瘍の治療は腫れている部分を切開し、膿をだす処置を行います。膿がでると痛みは楽になります。痔ろうが形成されている場合は根治手術を行います。

痔ろう根治術

  • 開放法

    開放法

    肛門の筋肉(肛門括約筋)と痔ろうのトンネルを一緒に切除する方法。痔ろうの部位、深さによっては変形、肛門機能の低下があるため選択できないことがあります。再発がほとんどみられない手術です。

  • くりぬき法

    くりぬき法

    括約筋を切らずにトンネルだけを切除する方法。
    深い痔ろうや複雑痔ろうに効果的です。肛門機能は温存され、治癒も早いですが、再発の可能性があります。

  • シートン法

    シートン法

    痔ろうのトンネルにヒモを通して縛り、徐々にトンネルを開放する方法。時間がかかりますが括約筋の損傷は少なくすみます。

日常生活でのおしりのケア

治療後も以前と同じようにおしりに負担がかかるような生活を続けていると新しい痔ができてしまいます。再び痔にならないためにも、おしりにやさしい生活を心がけましょう。

規則正しい排便習慣を身につけましょう

  • 便意があったらがまんせずトイレに行きましょう
  • 無理に出し切ろうとせずトイレは5分以内で

便通に良い生活を心がけましょう

  • 入浴はシャワーだけにせず、湯船にゆっくりつかりましょう
  • おしりや腰を冷やさないようにしましょう
  • 同じ姿勢を長時間続けないようにしましょう
  • アルコールや刺激物は控えめにしましょう

おしりにやさしい食生活のポイント

①便秘を防ぐために3食規則正しく食べましょう

①便秘を防ぐために3食規則正しく食べましょう

特に朝食は、朝の排便を促すために重要です。おにぎりやバナナ、シリアル など手軽で続けやすいものを取り入れてみてください。

②食物繊維の豊富な食品を

②食物繊維の豊富な食品を

食物繊維は、水に溶けない不溶性のものと水に溶ける水溶性のものに分けられ、どちらも便通をよくするために欠かせません。バランスよくとりましょう。

  • 不溶性食物繊維:野菜、特に根菜類、 いも類など
  • 水溶性食物繊維:果物、海藻類など
③水分を十分にとりましょう

③水分を十分にとりましょう

水分が不足すると、便は硬くなりスムーズにでてくれません。1日にコップ7~8杯程度の水分が必要です。朝起きてすぐ、仕事の合間などこまめに飲んでみてください。

④適度に油脂分もとりましょう

④適度に油脂分もとりましょう

油脂分もスムーズな排便を助けてくれますので、適度に油脂分も摂取しましょう。なかでもオリーブオイルがおすすめです。1日の摂取量の目安は30mL(大さじ2杯)。無理なダイエットは便秘のリスクを高めます。